2025.09.21

リハビリブログ-立つ-第1回「立ち上がりの間に起きている事」

菜乃花 老健 

こんにちは。菜乃花リハビリテーション部門ブログ担当です。

 

前回は施設で暮らすこと というタイトルで当施設で提供しているサービスについて紹介しました

前回はこちらから

https://www.ontoku.or.jp/blog/%e3%83%aa%e3%83%8f%e3%83%93%e3%83%aa%e9%83%a8%e9%96%80%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%95%93%e7%99%ba%ef%bc%9a%e8%aa%8d%e7%9f%a5%e7%97%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e7%ac%ac8%e5%9b%9e%e3%80%8c/

 

今回からは何回かにわけて「立つ」ということについて考えてみましょう


「立ち上がる、その瞬間に起きていること」
— 起立動作の分解とその意味 —

 

「立ち上がる」。
それは、私たちが1日に何度も無意識に行う、ごく当たり前の動作です。
しかし、高齢になったり病気やけがの影響を受けたりすると、この“当たり前”の動作が難しくなることがあります。

今回は、理学療法士の視点から「立ち上がる」動作、いわゆる起立動作を解剖学的・機能的に分解しながら、「なぜ立てないのか?」「どこを支援すべきか?」を考える入り口としてご紹介します。


起立動作は「一瞬」ではなく「3つの流れ」から成る

起立動作は単純に「椅子から立ち上がる」というだけでなく、以下の3つの動作フェーズから成り立っています。

座った姿勢

① 前傾フェーズ(準備期)

骨盤を前傾させ、重心を足元へ移す段階。

上体を前に倒すことで、床反力を得る準備をします。

この時、股関節・体幹の柔軟性足底感覚も重要になります。

※床反力とは※

立ち上がるとき、ただ自分の筋力だけで体を持ち上げているわけではありません。
実は、足の裏から地面を“押し返す力”――いわば「ジャンプの踏ん張り」のような力を使っています。

このとき地面から返ってくる反発力を「床反力(ゆかはんりょく)」と呼びます。
うまく立ち上がるためには、この床反力をしっかり受け取れる
姿勢(前傾)と重心の位置が大切です。

② 立ち上がりフェーズ(立ち上がり)

下肢(大腿四頭筋・臀筋)を使って身体を持ち上げる段階。

椅子の座面から臀部が浮き、膝関節と股関節を同時に伸ばしていきます。

最大の筋力負荷がかかるフェーズであり、ここが難しい方も多いです。

③ 立位安定フェーズ(安定期)

立ち上がった後にバランスを取って安定するフェーズ。

体幹と下肢の協調、視覚や内耳、足裏の感覚なども必要になります。

この安定がないと、すぐに座り直したり転倒のリスクが高まったりします


どこでつまずく?起立動作の「観察ポイント」

施設でリハビリをしていると、「なんとなく立てない」という場面に多く遭遇します。
ですが、実際は「どのフェーズで困っているか」によって、アプローチの内容はまったく変わってきます。

フェーズ よくある問題 具体的な観察ポイント
前傾 骨盤が後傾したまま、前に倒れない/怖がって体が硬直 背中が丸まっているか/足裏に体重が乗っているか
立ち上がり 太ももやお尻の力が出ず、立ち上がれない/膝が震える 両手に過剰に体重をかけているか/声かけ後に動き出せるか
安定 立ってもフラつく/すぐに座り直す/目線が落ちている 足の幅・重心移動・姿勢保持時間など

まとめ:立つ動作には「段取り」と「支える力」がある

「立つ」という動作は、一瞬の筋力だけで行われるものではありません。
それは、姿勢の準備 → 筋の連携 → 感覚による安定という“協調運動”であり、小さな成功体験の積み重ねによって再学習されていく動きでもあります。

 

理学療法士は、起立動作を一連の“流れ”としてとらえ、それぞれの段階で「どんな支援が必要か」を見極めながらリハビリを行っています。


次回は、「なぜ“立てない”のか?その理由を探る」
 高齢者における起立困難の原因を、筋力・関節・感覚・認知の視点から解説します 

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