2021/12/14
5Fぬりえをしました♪
こんにちは。菜乃花リハビリテーション部門ブログ担当です。
前回の記事では、「立った姿勢、その訓練」をご紹介しました。
前回はこちらから
— 生活に息づくリハビリの力 —
「立つことができるようになった」
その瞬間は、本人にとっても、支援する私たちにとっても大きな喜びです。
けれど、リハビリの本当の目的は“立てるようになること”ではありません。
そこから――
「立ってできることが増える」
「立って生活が戻る」
その一歩先を目指すのが、老健でのリハビリテーションです。
今回は、立位の力を生活場面へどうつなげていくのかを中心にご紹介します。
1. “立つ”ことが生活のあらゆる動作を支える
立つことができるようになると、生活の中の多くの行動が変化します。
それは、単なる「動作」だけでなく、自信・社会性・感情の回復にもつながります。
・トイレ動作:立ってズボンの上げ下げ、姿勢保持、移乗
・整容、着替え:鏡の前での立位姿勢、腕を動かす際の体幹安定
・食事:配膳・片付け、テーブルの立ち座り動作
・家事:立位での洗面・調理・洗濯・掃除など
・外出:靴の着脱、杖や歩行器への移行動作
→つまり、「立つ力」は“生活を再構築するエンジン”のようなものです。
2. 日常の中で“立つ機会”を作る
リハビリ室だけで練習しても、生活の中で繰り返されなければ身につきません。
私たちは、日常の中に「立つ場面」をちょっとずつ増やす工夫をしています。
・トイレ誘導時に手すりを活用して“自分で立つ”経験を繰り返す
(手すりも持ちやすいように、立ちやすいように工夫をします)


・整容動作を座位→立位へ少しずつ移行する
(車椅子に対応した洗面台がありますが、立って手を洗う等して頂きます)


→“1日に何回、立てたか”を意識することが、リハビリの質を変えます。
3. ご家族・介護職ができる“立位サポート”
「立たせる」ではなく、「立つきっかけを作る」。
この意識の違いが、本人の“自分でできた”という感覚を引き出します。
声かけのコツ:
「立ってください」ではなく、「前に少し体を倒してみましょう」
「せーの」で一緒に動くことで安心感を与える
立てた瞬間には「今の動き良かったですね」とフィードバックを即時に
環境づくりのヒント:
椅子やベッドの高さを、立ちやすい位置(膝角度90度以下)に調整
床に滑り止めマットを敷いて安心感を高める
手すり・家具の配置を見直して、自然に“立ちたくなる導線”を作る
4. “立つ”を支えるチームアプローチ
老健のリハビリは、療法士だけで完結しない支援です。
立位を中心にしたチーム連携が、生活の質を大きく変えます。
・理学療法士:立ち上がり・立位保持の分析と再教育
・作業療法士:立位での生活動作(整容・トイレ・家事など)への応用
・言語聴覚士:立位姿勢での発声・嚥下訓練(体幹姿勢と気道確保)
・看護師:起立時の血圧変動や倦怠感の観察・共有
・介護職員:日常場面での声かけ・動作補助の実践者
・管理栄養士:姿勢での食事動作、エネルギー消費量への配慮
→ハビリ室で育てた“立つ力”を、現場全体で“使える力”に変えていく――
それが、老健のリハビリテーションの真価です。
5. 「立てる」ことがもたらす心理的変化
身体が変わると、心も変わります。
特に「自分で立てた」という成功体験は、自己効力感(やればできる感覚)を強く刺激します。
・立てるようになってから笑顔が増える
・「やってみよう」という前向きな発言が増える
・職員との関わり方も変化し、コミュニケーションが増える
→“立てる”ということは、「自分の足で生きる」という感覚を取り戻すことでもあります。
まとめ:生活の中で「立つ」ことを取り戻す
立てるようになる。
立って生活できるようになる。
そして、その人らしく立つことができるようになる。
老健のリハビリは、そのプロセスを生活の中で完成させる場所です。
私たちは、動作を鍛えるだけでなく、「立つことに意味が生まれる瞬間」を支援しています。