2025.07.31

リハビリ部門からの啓発:認知症について第4回「『あぶないから動かさない』ではなく『安全に動けるようにする』」

菜乃花 老健 

こんにちは、菜乃花リハビリテーション部門ブログ担当です。

 

前回は「認知症の人が感じる【いま・ここ】」という題名でリアリティオリエンテーションを紹介しました

前回はこちらから

https://www.ontoku.or.jp/blog/%e3%83%aa%e3%83%8f%e3%83%93%e3%83%aa%e9%83%a8%e9%96%80%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%95%93%e7%99%ba%ef%bc%9a%e8%aa%8d%e7%9f%a5%e7%97%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e7%ac%ac3%e5%9b%9e%e3%80%8c/

 

今回は「認知症のある方に対する安全確保と“動き”」についてお話します。


「動く=危険」ではないんです

転倒リスクや迷子、突発的な行動など、認知症の方の“動き”に対して不安を感じることは少なくありません。

しかし、**「動かさないでおこう」ではなく「安全に動ける環境や支援をつくる」**ことこそ、生活の質を守る第一歩です。

例えばこのように”寄り添って歩く”ことで「安全な移動と歩く力の維持」が両立できます。

こちらの男性は見てわかるように左に体が傾いていますが、足腰の力はしっかり残っています。
でも、

「どう」歩けばいいか

「どこへ」歩けばいいか

「いつ」歩けばいいか

「どのように」歩けばいいか

が分からなくなってしまっているのです。
私たちは、そんな方のそばに寄り添いながら、声をかけたり、歩き出すタイミングを一緒に感じたり、進む方向を示したりしています。
無理に手を引くのではなく、「一緒に歩く」ことを大切にしながら、安心して、その人らしく歩けるように支援しています。


環境が“できる”を支えます。

廊下に設置された手すりは、転倒を防ぐための道具であるだけでなく、「自分で歩いてみよう」という気持ちを引き出す環境要素でもあります。

また、手すりは空間の中に“導線”を作る役割も果たします。
どこを通ればよいか、どこまで行けるか――そうした身体の動きと意図をつなぐガイドラインとして、安心感と方向性を提供します。

「つかまれる場所がある」ことで、移動は“危ないこと”から“やってみたいこと”へと変わるのです。


トイレも「できる」を支える場所に。

トイレも、工夫次第で「安全に自分で行ける」空間に変わります。
この写真のように、車椅子からの移乗や立ち上がりを助ける可動式の手すりやL字型バーが整備されていれば、自分のタイミングで排泄する力を引き出すことができます。

また、**座っている間の姿勢を安定させるための座位保持用の手すり”**(写真中央、縦手すりの右側の折りたたまれたバー)があることで、「転ばないか」「倒れないか」といった不安を軽減し、安心して排泄動作に集中することができます。

環境が「安全にできる」自信と自立を生み出すこともあります


「今」と「ここ」が揺らぐ不安の中で

認知症の方は、時間や場所の感覚が揺らぐことがあります。
つまり、「いま」「ここ」に対する確信が持てないことで不安や混乱が起こりやすいのです。

だからこそ、繰り返し同じ環境で動ける経験が、見当識の安定と安心につながっていきます。


おわりに

「危ないからやらせない」ではなく、
**「できるように支える」「危なくないように整える」**という考え方が、認知症ケアの土台になります。

次回は、実際に現場で出会いがちな「困りごと」と「困っている人は一体だれか」についてお伝えします。
引き続きご覧ください!

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