2025/5/3
菜乃花での歩行訓練の1「歩行器」
こんにちは。菜乃花リハビリテーション部門ブログ担当です。
前回は「なぜ“合わない車椅子”は身体を壊すのか」
というお話で合わない車椅子のリスクのお話をさせていただきました。
前回はこちらから
― “誰が・どこで・何のために”から考える ―
車椅子と聞くと、
「とりあえずこのサイズでいいか」
「軽いほうが楽だろう」
そんな基準で選ばれてしまうことがあります。
しかし、車椅子は “その人の生活を支える環境” です。
靴や椅子と同じように、身体や生活に合っていなければ快適に使えません。
では、車椅子を選ぶときに最も大切な視点とは何でしょうか。
テクノエイド協会のフィッティングガイドでは、
車椅子を選ぶ際に欠かせない考え方として、
という 3つの視点 が提示されています
この3軸を簡単に説明しながら、
正しい車椅子選びのポイントを見ていきます。

1. 「誰が」使うのか
最初に考えるべきは “その人の身体と生活の姿” です。
▼身体の特徴
・体格(身長・体重・座面幅の余裕)
・筋力・体幹保持力
・片麻痺の有無
・関節の可動域、痛み
・座位耐久(1時間?30分?)
たったこれだけでも、選ぶべき車椅子は大きく変わります。
例:
・体幹が傾きやすい人 → 背張り調整が必須
・麻痺がある人 → 体を支える側方サポートが必要
・小柄な人 → 奥行きが合わなければ姿勢が前に崩れる
▼生活習慣や姿勢のクセ
・長時間座る?短時間?
・食事を車椅子で取る?
・テレビを見る姿勢は?
・好きな活動は?
これらがわかると “座り方の傾向” が見えてきます。
2. 「どこで」使うのか
車椅子は 環境の影響 を強く受けます。
▼使用する場所
・家なのか、施設なのか
・玄関の段差やスロープの有無
・廊下幅や家具の配置
・トイレ・脱衣室の広さ
・テーブル高さ(食事環境)
例:
・家庭の狭い廊下 → 小回りがきく小径キャスターが向く
・外出が多い → タイヤ径が大きめで段差を越えやすい
・食事の姿勢を重視 → テーブル高さと座面高の関係が鍵
▼座位で過ごす“時間”
家で1〜3時間座るのか、
施設で5〜8時間座るのかで、必要な車椅子は全く変わります。
長時間座る人は、
座面奥行・背張り・クッションの適合が特に重要。
3. 「何のために」使うのか
車椅子を選ぶ目的は人によってまったく違います。
▼主な目的の例
・移動がラクにできるようにしたい
・食事を安定してとりたい
・リハビリのための座位をつくりたい
・外出を楽しみたい
・身体を休めたい(休息座位)
同じ車椅子でも、
「移動目的」と「食事目的」では選択が変わります。
たとえば、
・移動が中心 → 軽くて操作しやすい
・食事が中心 → 姿勢の保持性が重要
・長時間座る → クッション性能・背張りの微調整が必須
フィッティングガイドでも、
“目的の違いは車椅子に求める性能そのものを変える”
4. 車椅子選びの“基本パラメータ”
上記の「誰が/どこで/何のために」に沿って、
具体的な選び方の基準も整理しておきます。
座面幅
指2本分〜握りこぶし1つ分の余裕が理想。
広すぎると姿勢が傾き、狭いと痛みが出る。
座面奥行
座骨~膝裏までの長さに応じて調整。
合わないと前方滑り(仙骨座り)の原因になる。

座面高(座面と床の高さ)
足裏がしっかり接地する高さが基本。
浮いてしまうと骨盤が後傾しやすい。
背張り調整
背中のフィット感を左右する重要な要素。
わずかな調整で、姿勢の安定感が大きく変わる。

クッション選択
褥瘡予防だけでなく、姿勢保持にも大きく関わる。
ウレタン・エア・ジェルなど目的に応じて選択。

フットサポートの高さ
足部の位置がズレる → 骨盤がズレる → 背中が崩れる
という“姿勢の連鎖”を生むため重要。
5. 正しい車椅子選びは「生活を選ぶ」こと
車椅子は単なる移動手段ではなく、
生活の基盤を整える道具 です。
だからこそ、
・その人がどんな生活を送りたいのか
・どこで過ごす時間が長いのか
・何を大切にしたいのか
これらを丁寧に考えることが、
そのまま “生活の質を守ること” につながります。
老健リハビリテーション部門は、
利用者やご家族と一緒に「より良い車椅子座位姿勢」を探し、
安心して生活できる環境づくりを支えていきます。
まとめ
・車椅子は“誰にでも同じ”ではない
・身体・環境・目的の3つから選ぶのが基本
・合う車椅子は姿勢を安定させ、生活そのものを豊かにする
今回の内容は
公益財団法人テクノエイド協会 HP
https://www.techno-aids.or.jp/
を参考にしています。