2012.01.16
介護チーフより ~ オヤジの事について ~
メルヴェイユ
二週間以上遅くなりましたが、みなさま明けましておめでとうございます。今年もご入所者様・ご家族様に、より一層ご安心頂ける施設を目指して職員一同頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。
さてさて、新年のご挨拶はこれぐらいに致しまして、このブログを通し、介護チーフをさせて頂いている僕が最近ちょっとだけ成長したんじゃないかと思った事をお伝えさせて頂きたいという衝動に急に駆られてしまいました。お読み頂いてる途中でうっとうしいと思われましたら、この文章を飛ばして頂いて、下の文章へとお進み頂けたらと思います。
僕のオヤジがちょっとした病気で年末から入院してるんですね。
去年、僕のおばあちゃんが亡くなってから一人暮らしになったオヤジですが、認知症のおばあちゃんの介護をしなくなったからか、気が抜けたように今度は自分が病気になっちゃったんですね。
んで、入院する直前に、
「一人暮らしには広いし、家賃も高いから」という理由で今の家を引き払う為に、府営住宅に申し込んでたみたいで、寝屋川市のところが当たったんですよ。
オヤジは昔から自分勝手な奴で、糖尿なのにお酒もタバコも好きなだけやり続けて、お金は全く貯めずにすぐにゴルフなどで使うというような感じ、僕やおかんの言う事など全く聞く耳持たず自分で何でも決めてしまうという絵に描いたような駄目人間なんですよ。
今回も、「せっかく府営住宅が当たったかもしらんけど、病気やし、いつどうなるかもわからんから、吹田で安い家を探してくれ」とお願いしたんですけどね。僕んちも吹田なんでね。そんなお願いなんか全く無視ですよ。勝手に病院を抜け出して、自分の退院の時期に合わせて府営のほうに移れるように手続きを済ませてやがるんですよ。車も今はオヤジの家の駐車場に停めてて、僕も使いたい時にはオヤジんちに取りに行くという感じなんですけど、寝屋川に行ったら、車ごと持って行きよるんですよ。僕も半分お金出したんですけどね。
オヤジの病気なんて完全に自業自得からくるものなんで、
“しんどい思いしたらええわ”って思うんですけどね、そんなオヤジがね、認知症を発症してからのおばあちゃんの介護に関してはきっちりやりよったんですよね。僕のおばあちゃんですからオヤジからしたら母親ですよね。オヤジはおばあちゃんにも散々苦労をかけたんですよ。お金を使いまくったりしてね。まぁ、親不孝な息子やと思います。そんなオヤジなんですけど、ほんまにおばあちゃんの介護はきっちりやりよったんです。認知症が進行し、入院し、最期にはオヤジの事もわからなくなってしまいましたけど、一生懸命話かけたり手をさすったり、時には涙を流したり。あんなオヤジを見るのは初めてでした。
普段全く言う事を聞かないくせに、介護に関しては僕に意見を聞いてきました。ご飯が食べられなくなって、ドクターから胃瘻を勧められた時も、僕に相談してくれて、「しない」という答えを出しました。辛い思いをして無理やり寿命を延ばすのではなく、自然な形で衰えていくのを受け入れる覚悟をしたのでしょう。
おばあちゃんは亡くなる10分前に、病院の看護師さんに、
「ありがとう」と声をかけていたそうです。病院から危篤の知らせがあり、先に駆け付けたのは僕でしたが、ほんの10分違いで間に合わず、息を引き取っていました。その1時間後、オヤジが病院に到着し、僕が最期の状況を伝えた時には、
「苦しまんと逝けたからよかったやん。」と笑い、病院のドクターや看護師さんに「ありがとうございました。」と頭を下げていました。
今は“自業自得やからしんどい思いしたらええわ”と、入院中のオヤジに対して思っている僕ですが、お互いもっと歳を取り、オヤジがすっかりおじいちゃんになった時には、かつてオヤジがおばあちゃんにしたように、僕もオヤジに対してするようになるんかなぁって、この前、オヤジのお見舞いに行った帰りに思いました。
一人の介護職員として、何かが少しかわったような気がしました。
2012.1.16 ちょっとだけ成長した気になっている介護チーフ